先日はとりあえず再生できるだけで終わったのだが、それの続き。
最低限のやっつけ修理ではやっぱりちゃんと動かないので再度もう少し修理を試みた。できればデッキ1、デッキ2とも動かしてみたい。
症状としてはデッキ1が全く再生できない。デッキ2はA面再生できるがB面再生ができない。
まずはゴムを取り外してお湯で煮てみた。なんのこっちゃという感じだが、劣化して溶ける前なら伸びたゴムは鍋で煮るとひとまわり小さくなる。下の写真ではちょっと小さくなっている。
デッキ2のB面再生がおかしいのは、リバース再生時にヘッドをひっくり返す機構を動かすのに結構トルクが必要で、ゴムが伸びすぎでスリップして不可能になっていたようだ。これもゴムを煮て試すと問題なくなった。
ゴムはまたそのうち伸びそうだけれど、これでデッキ1/2ともリール自体は回るようになった。以下の写真はデッキ2でB面再生ができているところ。
回るようになったものの今度はデッキ1が倍速再生されてしまう。これはピンチローラーが上がっていない状態になると起こる症状のようだ。
メカを分解してみてみたら、ピンチローラーのプラ部品がバネのテンションに負けて割れていた。ここは鉄で作ってたのをプラで作っちゃうとこうなるだろうなあという箇所。しかも裏が肉抜きされていて割れに弱い作り。瞬間接着剤などでくっつけてもすぐにパカッと割れてしまいそうだ。
下の写真では左のピンチローラーから外れたバネだけがメカに残っている。
修理の方法としては、肉抜きされている部分にエポキシパテを充填して補強してみることにした。周りには干渉する部分はなく問題はなかったので充填したうえでさらに盛り付けて3角に成型(形はテキトー)。これである程度は強度が期待できるはず。
バネをセットしてメカを元に戻すと正常にピンチローラーが持ち上がり、倍速再生はされなくなった。
ゴム伸びの解消とピンチローラーの補強・修正で修理自体は完了した。表示部のすすけた汚れを拭いたり全体をクリーニングして終了。パンクしたコンデンサの交換からメカの破損修理と掃除までなかなか盛りだくさんだった。
テープデッキの末期の機種だけあってやはりメカは弱いようで、ゴム伸びとピンチローラーのプラ割れでおかしくなっている個体は多いのではと思った。
T-WD5Rは操作も複雑でよくわからないのだが、マニュアルがパイオニアからダウンロードできる。音はそれなりに良いのでマニュアルを見ながら使っていきたいところだ。
タイトルに反して仕事にならない修理・改造・破壊記事を書くジャンクなblogです。
2018年3月20日火曜日
2018年3月6日火曜日
デジタル補正機能搭載カセットテープデッキの修理(PIONEER T-WD5R) その1
どこかでデジタルの対極としてカセットテープがはやっているらしいと聞いたが、さっぱり実感がない世代なのでそれとは全く関係なくカセットテープデッキを入手したので修理してみる。
カセットテープは元々アナログな機械であって、メカの精度が良い高級機で厳密な調整をすれば一般的なカセットテープのイメージを軽く超えた音を出す。それとはまた別の方向でわかりやすい高音質を目指したのがPIONEER T-WD5Rのようだ。S/N 90dB DIGITAL PROCESSING SYSTEMのシールがなかなかすごそうな感じ。
T-WD5Rはノイズの低減とカセットテープで足りていない事の多い高音部分を補完してこもった感じを無くすのを目的としたデジタル補正機能を搭載している。価格帯は6万円なのでメカはエントリーレベルで、それにデジタル補正機能を足したらどこまでいけるのかが興味深い。
この機種の上位に同様の補正機能と多少良いメカを積んだT-D7という機種があり、こちらはまだそこそこの値段で取引されているようだ。
この個体も毎度のジャンク入手なのでちゃんと動かない。不具合は以下の通り。
ヘッドをアルコールで拭いたところ綿棒が茶色くなったのでそこそこ使い込まれた個体のようだ。内部は開けられた形跡はなかった。
1)はゴムベルトが伸びているらしい。
とりあえずダビングはしないのでデッキ2を使おうということでスルー。デッキ2も結構怪しいが、とりあえずは音がふにゃふにゃせずに再生できる。 そのうちベルトを交換したいところだ。
2)はオープンクローズ位置検出スイッチの接触不良。
接点を磨いてから接点グリスを塗っておいた。 このタイプは接点が酸化して変な動作を起こすことが多いのでよくあるタイプの故障といえるだろう。CD-ROMドライブなどでも使われていて勝手に閉じるのでイラッとすることがある。
3)は、電源部のコンデンサが漏らしていた。
カセットデッキはヘッドが微弱信号を扱うのでモーター系などのノイズを拾うことは多いのだが、 モーターが全く動いていないときも鳴っているのでヘッドからではない。ハム音はヘッドホンからもラインアウトからも同じく出ている。その上電源を落としてスタンバイ状態でも出ていたのでちょっとおどろいた。
かなり大きいレベルのハム音なので電源かなと思って基板を見たらコンデンサが下から漏れて斜めになっていたのでとても分かりやすい状態であった。
噴いていたコンデンサはELNAのRE2 9651(96年51週製造?)25V 4700uF。同じのが無かったのでジャンク箱にあった日ケミの25V 6800uFと交換して、ハムノイズは全くなくなった。足が抜けていたくらいなので、ノイズはともかくコンデンサなし状態でよく動いていたものだ。
以上で試聴できる状態になったので古いカセットを聴いてみた。
高音がある音楽でもちゃんと伸びるのが分かり、なるほど~という感じで分かりやすく補正機能の効果はあるようだ。 機能ONで単純に高級機の音になるわけではないが、詰まった感じのするカセットの音からはだいぶ良いものになるようだ。
録音状態が悪い場合やフェードアウト時などにエコーがかかって聞こえたり、シャラシャラした低ビットレートのMP3みたいに聞こえる場合もある。 デジタル補正機能を通すということで多少は加工された感じがするのは仕方ない所だろう。
それよりもS/N 90dBのシールが貼ってあるとおり、カセットとは思えないS/N比を実現しているところのほうが効果が大きい。ノーマルでもハイポジションのテープでも結構聴けてしまうのが良い。ふつうのカセット以上CD未満にはグレードアップする。
ただ、T-WD5Rのメカの出来はだいぶ安価版なので音の安定感があるわけではない。そもそもオートリバース機では仕方ない面もある。カタログスペックのワウフラッターは0.09%WRMSで更にゴムが伸び気味だからもっとひどいはず。(参考までにSONYのTC-K333ESRなどのカセット全盛期の中級機では0.025%WRMS程度。)
古いカセットをそれなりにきれいにデジタル化したいとかそういう人には今でも需要があるんじゃないかなーという感じで、低価格でやりたいことを実現した良く出来ている機種であった。
今回のこの記事に関係あるようなないような感じだけれど、東芝がカセットテープもハイレゾにしてしまうCDラジカセを発売したようだ。
・東芝Aurexから世界初の“ハイレゾCDラジカセ”「TY-AK1」登場
仕組みとしてはちょっと違うのかも。CDもカセットもハイレゾに出来るならなんでもありだなという気はする。T-WD5Rと比べて音質は進化しているのかどうか聴いてみたいところだ。
カセットテープは元々アナログな機械であって、メカの精度が良い高級機で厳密な調整をすれば一般的なカセットテープのイメージを軽く超えた音を出す。それとはまた別の方向でわかりやすい高音質を目指したのがPIONEER T-WD5Rのようだ。S/N 90dB DIGITAL PROCESSING SYSTEMのシールがなかなかすごそうな感じ。
T-WD5Rはノイズの低減とカセットテープで足りていない事の多い高音部分を補完してこもった感じを無くすのを目的としたデジタル補正機能を搭載している。価格帯は6万円なのでメカはエントリーレベルで、それにデジタル補正機能を足したらどこまでいけるのかが興味深い。
この機種の上位に同様の補正機能と多少良いメカを積んだT-D7という機種があり、こちらはまだそこそこの値段で取引されているようだ。
この個体も毎度のジャンク入手なのでちゃんと動かない。不具合は以下の通り。
1)デッキ1が動かない(デッキ2はかろうじて動く)こんな感じでわかりやすく故障しているので普通の人は捨てるしかない。外装の見た目はきれいだけれど天板はなんかべたついている。
2)デッキ1デッキ2ともフタを開けると勝手に閉じる
3)ヘッドホンジャックにヘッドホンを挿しただけでハム音(ブーン)が聞こえる
ヘッドをアルコールで拭いたところ綿棒が茶色くなったのでそこそこ使い込まれた個体のようだ。内部は開けられた形跡はなかった。
1)はゴムベルトが伸びているらしい。
とりあえずダビングはしないのでデッキ2を使おうということでスルー。デッキ2も結構怪しいが、とりあえずは音がふにゃふにゃせずに再生できる。 そのうちベルトを交換したいところだ。
2)はオープンクローズ位置検出スイッチの接触不良。
接点を磨いてから接点グリスを塗っておいた。 このタイプは接点が酸化して変な動作を起こすことが多いのでよくあるタイプの故障といえるだろう。CD-ROMドライブなどでも使われていて勝手に閉じるのでイラッとすることがある。
3)は、電源部のコンデンサが漏らしていた。
カセットデッキはヘッドが微弱信号を扱うのでモーター系などのノイズを拾うことは多いのだが、 モーターが全く動いていないときも鳴っているのでヘッドからではない。ハム音はヘッドホンからもラインアウトからも同じく出ている。その上電源を落としてスタンバイ状態でも出ていたのでちょっとおどろいた。
かなり大きいレベルのハム音なので電源かなと思って基板を見たらコンデンサが下から漏れて斜めになっていたのでとても分かりやすい状態であった。
噴いていたコンデンサはELNAのRE2 9651(96年51週製造?)25V 4700uF。同じのが無かったのでジャンク箱にあった日ケミの25V 6800uFと交換して、ハムノイズは全くなくなった。足が抜けていたくらいなので、ノイズはともかくコンデンサなし状態でよく動いていたものだ。
以上で試聴できる状態になったので古いカセットを聴いてみた。
高音がある音楽でもちゃんと伸びるのが分かり、なるほど~という感じで分かりやすく補正機能の効果はあるようだ。 機能ONで単純に高級機の音になるわけではないが、詰まった感じのするカセットの音からはだいぶ良いものになるようだ。
録音状態が悪い場合やフェードアウト時などにエコーがかかって聞こえたり、シャラシャラした低ビットレートのMP3みたいに聞こえる場合もある。 デジタル補正機能を通すということで多少は加工された感じがするのは仕方ない所だろう。
それよりもS/N 90dBのシールが貼ってあるとおり、カセットとは思えないS/N比を実現しているところのほうが効果が大きい。ノーマルでもハイポジションのテープでも結構聴けてしまうのが良い。ふつうのカセット以上CD未満にはグレードアップする。
ただ、T-WD5Rのメカの出来はだいぶ安価版なので音の安定感があるわけではない。そもそもオートリバース機では仕方ない面もある。カタログスペックのワウフラッターは0.09%WRMSで更にゴムが伸び気味だからもっとひどいはず。(参考までにSONYのTC-K333ESRなどのカセット全盛期の中級機では0.025%WRMS程度。)
古いカセットをそれなりにきれいにデジタル化したいとかそういう人には今でも需要があるんじゃないかなーという感じで、低価格でやりたいことを実現した良く出来ている機種であった。
今回のこの記事に関係あるようなないような感じだけれど、東芝がカセットテープもハイレゾにしてしまうCDラジカセを発売したようだ。
・東芝Aurexから世界初の“ハイレゾCDラジカセ”「TY-AK1」登場
仕組みとしてはちょっと違うのかも。CDもカセットもハイレゾに出来るならなんでもありだなという気はする。T-WD5Rと比べて音質は進化しているのかどうか聴いてみたいところだ。
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