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    2011年4月1日金曜日

    2008年刊 真山仁「ベイジン」を読んで

    ※一部ネタバレですご注意

    相変わらず原発話でアレだが、ハゲタカがNHKで放映されてたってこともあり、真山仁氏の「ベイジン」上下巻を読んでみた。

    合わせて600ページ超があっという間であった。不謹慎厨にフクロ叩きにされそうだが、「面白い」。もちろんフィクションだからそう思えるだけで、ほぼ同じことが福島で起こってしまった今となっては2008年に書かれた予言書のようなものであり、恐ろしくもある。

    2008年の北京オリンピックに合わせて作られた世界最大の原発。様々な中国特有の利権により、ありえない工事と酷い管理体制で作られた原発がオリンピックの開幕にあわせて運転を開始する。世界にその成功をとどろかせるはずだったのだが。



    本書では、なかなか肝心なところに行かないなーと思っていたら、いきなり放り出されてしまう。本書では中国の原発で起こると思われていたことが日本で起こってしまったが、まさにこの本の続きといったところ。最悪の結末を辿った場合にある「続き」が現実世界で起こっている。

    原発話をわかりやすくするため、どうも登場人物が少ないせいでやけに原発の規模が小さい気がするのだが(小さな片田舎の清掃工場くらいのスケール感なのだ、といっても漢字一文字の人名乱発されてもわけ分からなくなるが)、爆発に至るまでの原因としては非常用発電装置の不具合やベントできない状況、その他諸々が現実の通りであり非常に生々しい。

    ※ハリウッド映画みたいなキーをひとつ押すと状況が表示される便利なパソコンとか、電源喪失中でも使える中央制御室のディスプレイとか、その辺は小説なのでつっこm(以下略

    現実の事故も、本書に登場する主人公の田嶋氏くらいスーパーマンで責任感のある人が東電社員に居たら結果はまるで違っていたはず。
    どこに取材したかは分からないが、東電みたいにトップは本書に登場する中国人並の利権集団であっても、実際に運転している人はこのくらい責任感があるのだろうか。本書に登場する中国人作業員並の責任感だとは思いたくない。

    特に事故が起こってからの流れは東電スケールの1週間が話の中では数十分で進む。もし地震に耐えていて、原発廃炉へのしがらみがなければものすごく早く解決したはずだ。東電はとにかくでかすぎて、船頭が多すぎて座礁して爆発した感じである。本書のように正しいことを即断即決できる人が居ないのだ。

    しかし、現実にも起こった海水注入のくだりは作ってからいきなり原子炉を殺すことになり、まぁ実際にはこんな決断できる人は居そうにない。ここまでの決断ができる人が居ないと原子力発電所は作れないという事であろう。

    今では押す機会は非常に少ないのだろうが、巨大なロケットで人工衛星を打ち上げるときには爆破スイッチを押す決断をする人が居る。変な方向に飛んでいったら爆発させて危険を回避するのだ。そういう全責任を負える人が現実の原発には居なかった。

    個人的にはオマケなのだが、中国人の考え方を知る上でもためになる本だと思う。日本人がメンツを重んじる社会と付き合うのはなかなか難しいのだ。原子炉は政治と一体なのが舞台を中国に置き換えると非常にわかりやすい。

    原子力発電所とは何か、楽天的ではなくなぜ慎重にならないといけないかを理解するためには非常に理解の助けになる本である。今日は4月1日だが、現実がこの本みたいに嘘(フィクション)だったらどんだけ良かったかと思うのだ。

    4月18日追記
    原発事故予言ハゲタカ作家「菅政権の判断ミスは犯罪的だ」
    作者 真山仁氏へのインタビューが産経のzakzakに掲載。民主政権の対応のまずさも事態の悪化に拍車を掛けた、と。

    8 件のコメント:

    1. たった今読了しました。
      「メルトダウン(炉心溶融)」や「DG(非常用発電機)」の話など、福島第一原発問題と重複る部分が非常に多く、真山氏は現在のこの状況を予言していたのではないかと思うくらいです。
      日中文化の異いは扨置き、原発問題を深く掘り下げて認識したいという方にはお勧めです。

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    2. 匿名さんコメントありがとうございます。

      アメリカは今後も原発推進で、しかし日本で手こずるものを中国などの新興国に持たせて大丈夫かという論調もあるらしい。プラントがいくら良くなっても結局は人というわけで。
      日本も実際は大したことのない原発を仲間内のなれ合いで持て囃すだけ持て囃して結局無責任なのを痛感しました。ある意味(本書では)悪事を暴く組織がある中国よりひどいという状況。案外中国の方がうまくやるんじゃないでしょうか。

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    3. 『ベイジン』作中の日本人技術顧問のセリフに「実は、大連市郊外の原発は、当初、遼東半島の西側に計画されていたんだ。それを思うと背筋が寒くなる」とあります。小説では断層を避けましたが、現実には紅河沿原発は断層の上につくってしまった中国。あと2年で正式運用です。中国東北地方すべてに電力供給できるという中国原発きっての一号機の開炉。ところが去年、ニューヨーク・タイムズがそのプロジェクトにおいてそのトップ、康日新という人物が予算の4分の1近くを抜き取ったことがスクープされて以来、一切報道されなくなりました。大連郊外の紅河沿原子力発電所の問題は以下の3点。
      1,断層の上の原発
      2,康日新による低予算プロジェクト
      3,中国原発開発の独自性(これは中国国内の人が一番恐れているので間違いなく安全性に問題あり)

      地震がなくても心配です。
      日本でもソ連でも地震がなくても事故が(しかも臨界事故)起きてますからねぇ。

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    4. コメントありがとうございます。
      どうやら計画と建設では現実のほうが上を行ってしまっているようす。全然上手くやってないですね。
      そういえば中国って南アフリカに原発を輸出するつもりのようで。中国の技術をアフリカが使うってのも相当不安。

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    5. 「ベイジン」をこのタイミングで読みました。現実の福島を知った後なので火災の様子が手に取るように想像できます。小説では中国人の杜撰さが事故の主因として描かれていますが、地震がなくても、日本でだって同じことが起こるという想定でないと、「いい加減な中国でのおはなし」で終わってしまうと思います。

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    6. 日本人はすごい、中国人はバカという非常にステレオタイプな偏見を持った書き方をしているのはありますね。でも日本人でも技術の分からないバカが統率してたら同じ事です。
      どうも今回の東電を見ると、主人公の田嶋氏のような人は存在せず、物事の見通しや技術的な勘のようなものが分からないまま行き当たりばったりで判断して指揮していたようです。
      技術が分からないなら設計した企業なりに聞けばいいのにプライドが許さないのか企業は会議の席に入れてもらえなかったとか。意味が分かりませんが意図的に悪化させているのかも。

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    7. たまたま福島原発事故の直前に文庫化された小説を読んでいましたが一番印象に残ってるのは真山氏のあとがきです。

      人類がそれなりに繁栄を維持するためには、原発を抜きにしては考えられないだろう。
      だが、こと原発に関してだけは、コストや政治的な思惑ではなく、何よりまず安全を最優先に考えられるべきものだと、そのプロジェクトに関わる全ての人に心してしてほしいと思う。

      本当にその通りだと思います。

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    8. コメントありがとうございます。

      繁栄のための夢のエネルギーだった40年前から今まで安全がないがしろにされた結果、今では福島第一原発のために絶望して自殺する住民も出てしまったようです。
      金が第一、安全は無視、政治の道具あり人命は軽く使い捨てな原発の現状では、人類のそれなりの繁栄の維持さえ危うい。癌におびえながら死ぬのを待つだけです。

      これからも交付金めあてに安易に原発誘致を進めていく自治体は、安全に絶対はない以上目先の金に釣られずに、将来に禍根を残さない判断をして欲しいです。
      貧しい地域が少し建設で潤っても誰も住めなくなって死に絶えるんじゃ意味がありませんから。

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